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◆ 12月前半の営業日誌 | 2008/12/16 (Tue) |
病院の看護士の方から、子供が出来てから、井戸水が心配だと相談され、「川手さんの浄水器がつくばで噂になっていているけど、高いでしょう?」と聞かれた。大型のUF膜・イオン除去・全自動で稼動・家全体を浄化でき、エコキュートにも使用できるフル装備にすると、確かに高くなる。我々はこの性能を売りにしているが、一般の人には高いと思い諦めている人も多い。「井戸水対応の浄水器」をインターネットで探しても、類似商品はないし、「高い」か「安い」かは、人の満足度で決まるので何とも言えないが、メンテナンス費用も安いし、フィルターさえ代えれば何年でも使える装置なので、使った人には「安い」と喜ばれている。この看護士の方に紹介した人が「値段が高い」と思い、購入を迷っていると聞かされた。井戸水は突然濁ったりして、市販の浄水器では直ぐに詰まって使えなくなる。その為、今まではほとんどフル装備の製品を売って来た。しかし、JAICAの方、病院の院長さんなどは、膜だけの装置で順調に稼動している。そのうちに膜の精度も高くなり、膜だけでも十分使えるケースも増えてきた。不景気で井戸水を使う人も増え、限られた予算で買いたい人が相談に見えるため、予算に見合う装置をつくって販売してあげるのも、時代に合ったビジネスだと考えた。 当社の製品は日本・アメリカ・韓国・中国、この4カ国の水処理の会社から部品を購入して装置を製作している。金融崩壊前は大量でないと購入できなかったが、急激に景気が悪化し、全体の購買量が減る中、当社の購入量は増えて、仕入れに見通しが立ちだした。円高だし、在庫を切り崩して買えるので小口でも販売量を増やせば、業容を拡大出来ると考えている。膜だけの販売でも、使えば性能を知って貰えるし、UF膜を知る契機になる。信頼されたら、より高い性能にアップグレードすればいいのだし、柔軟な売り方を考えている。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 はじめまして、ホームページを拝見させていただき、同業者として、非常に脅威に感じておりますが、貴社の商品に非常に興味もあり、機会があればご挨拶したいと思います。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 このようなメールを戴いた。大手の水処理の会社の方からだ。大手企業と言ってもこのご時勢、不況の影響は深刻で看板だけでは乗り切れないし、会社の規模が大きい程、難しい。トヨタ、キャノン、ソニー等、日本を代表する名だたる会社がなりふり構わずリストラに動いている。この働く人を切り捨てる冷淡な動きが日常化すると、数年後には企業の価値に跳ね返り、値打ちのない一会社になり下がる。 私の会社は零細企業だが、超純水装置、大型の膜装置と零細企業らしからぬ商品を扱って来たので、多少の技術も蓄積している。しかし、新しい仕事の仕組を考え出す必要は常にある。企業間の競争社会では、規模の大小にハンディは与えられない。国内では規模の小さな会社ほど信用はないので、技術力とコスト力は大手企業を凌駕できるレベルでないと生きられないと自覚している。 100年に一度の不況と大騒ぎしているが、影響が広がりだした。円安政策で世界一になったトヨタも円高では赤字になる。実状は為替で稼いでいた会社だったと思うと大した話ではない。私達は本来、円高に慣れるべきだし、企業は円高でも円安でも耐えられる企業にならないと、大企業とは言えないと思う。雇用が大揺れし期間工、派遣の人員削減が広がりだした。円安で大儲けしておいて、少し利益が縮小すると弱者の首を切る。もはや大企業の価値は低下し、大手の力で人の一生を守れないのなら、盲目的に大手企業に群がる若者の安定志向も改めて、自立を促す機会にすべきだと思う。今の大企業の姿を見ると本当に寂しい。 20年近く水処理の仕事をしてきたが、始めた当初は、注目されない業種だった。だが、今のような不況になると何故か注目業種になる。水の自販機の仕事を始めたが、大手企業が参入して日本全体に普及していく中、我々は膜技術に特化することで生き延びて来た。「日本の水処理技術は凄い」とマスコミや評論家は持てはやすが、価格・技術共に世界の最先端を走っているとは思えない。韓国・台湾・中国も、アメリカの技術を真似て、今では技術レベルは世界で優劣は見られない。今回の不況は不思議で、影響の波及が異常に速い。ビジネスのスタイルも、ルールも、習慣性も変わり、油断出来ない。今後は情報力と勘、スピードが鍵になりそうだ。アメリカが立ち上がるのも数年はかかると思う。 今、マイクロバブルが実用化に向かっているが、私も長年マイクロクラスター水を扱って来た経験を生かして、マイクロバブルの特徴を生かした独自の装置を考えている。熊本大学でマイクロバブルの装置をつくって貰い、当社のクラスター水製造装置と組み合わせて使っている。この装置をお風呂で使えば、簡単に自宅の湯船を「マイクロバブル温浴水」に変えられる。確かな洗浄力で、福祉にも使えるし、全身美容にも使え、不況に強いビジネスになる可能性がある。理論的には1000分の3ミリほどの粒子をもつ水になるので、同等の細かな汚れが取れる。洗剤を使わずに体が清潔にできれば、皮膚のダメージにも効果が高いし、アトピーの人にも朗報になる。不況で物が急に売れなくなっているが、お風呂には誰でも入るし、この装置を使うと炭酸泉・酸素泉等、自由に自宅のお風呂でお湯を活性化出来て健康・美容・温浴が楽しめる。 量販店のY田電機の店員に景気の様子を聞くと、全店舗が赤字らしい。売れているのはJ高田で、断トツらしい。J高田は店舗を持たないで、TV・インターネットで販売し、倉庫等にしかお金をかけないので、当然、価格に競争力が生まれる。私の会社もつくばと浦安に事務所とショールームがあるだけで管理費も少ない。その為、装置は安くて、性能は高い。価格は公表していないが、断トツで安い。つきつめると商いの基本は価格と性能力だと思っている。3ヶ月程このまま円高が続くと、淘汰される企業も増えてくる。柔軟に対応して耐えていれば、新しい風が吹いてくる。政府は選挙目当てで「中小企業支援」と声高に叫んでいるが、ほとんど頼れないだろう。 数ヶ月前にも原油が高騰し、耐えられずに油離れを起こして需要が落ちて油の消費が激減した。「売れない時は売れる商品を開発する」という気概が周りに乏しいと元気が出ないが、私は私で頭を回転させている。今は内需の時代。社会の隙間を狙って、チャンスの芽を植えている。新しい仕事は色々考えている。「マイクロバブル温浴水・宅配便」もその一つで、真剣に考えをまとめている。 日本の個人資産総額が1500兆円あるらしい。それでも先が見えないと言っているし、振り込め詐欺の被害は後を絶たない。不思議な国、日本だ。誰しも、不安の無い人生などないし、苦労しないで上手く行くはずがない。 銀座の和光に納入した装置を、研修生に真似て製作させた。若者を研修生の形で受け入れて教育しているが、新人類は面白い。この装置を研修期間が終わるまでには和光の二号機として納入したい。一つ一つ成功を重ねていけば、当社で働ける機会も出てくるだろう。 私は井戸水に絞り、装置を販売しているが、この世界は規制もなく無法地帯だ。メンテで客先を訪れる度に我々が販売した膜ろ過装置の性能は凄いと我ながら思う。この不況で、小型の販売は抑え気味にしているが、使った人からは評価が高い。小型は膜の技術を学ぶ目的とサービスで始めたが、何年経っても頑丈だし部品を買えるだけで何年でも使える。次の狙いは中型・大型の世界で、6インチ膜を主体にした装置の販売を考えている。阿見、赤塚、牛久、老人施設から問い合わせがあるが、阿見と牛久の方の注文は決まった。老人ホームも福祉の関係だし、喜んで貰える価格を提示したい。バス会社から色度80の水の浄化の相談を受けた。不況と円高で、大手企業が足踏みする中、業務用の話も舞い込んでいる。 地元の銀行から融資を薦められているが、期待もこめられている。将来、融資が止まる恐れもあるので、実積を積んで置きたい。本来、私の仕事は景気に左右される類の職種ではないが、今回は経済が底割れする可能性も高い。景気は地方に厳しいと言われて来たが、怖いのは東京だと思う。日本中の富を一極集中してきた東京だが、不動産・自動車関連・金融も駄目となると税金も減る。つくばや田舎に住んでいれば畑で野菜を作ったりも出来るが、東京ではお金がないと生きられない。東京の経済が底割れする事態になると、各都市に波及する。新東京銀行も破綻に近い状況だし、危機の前兆として捉えている。お金持ちはうらやましく思われがちだが、この不況下ではお金持ちが一番ダメージを受けている。字も読めないと批判された人もいたが、字よりも空気を読んで欲しい。彼を選んだ人達も見る目がないし、レベルが高いとは思えない。首相が迷走して、放言が袋叩きにあっているが、彼の放言は本音だろう。彼を選んだ選挙民の民意の低さが原因で「誰か」ではなく、国民自身の責任だと思う。 一時期、石油が高騰し、漁民がデモを行い、運送業が廃業ラッシュになると大騒ぎしたが、油が暴落して今度は景気が悪い。良くなっても悪くなってもこの状態で進むと思う。混乱はいつでも起きる一過性の物で、全てが自然淘汰の一環として冷静に見ている。雇用問題は大きなうねりになり、久々に若者が怒りだす気配が感じられる。私は数年前から、自動車の運転も止めて、移動もバス・電車・徒歩で、極力省エネの生活を送っているが、苦にはならない。 12月8日メンテで鹿嶋市を訪問した。田舎暮らしの人で、広い庭も整備され畑も完成していた。装置を納入して1年半を越すが完璧だと喜んでいた。私の仕事はローテクとハイテクが組み合わさった装置で、自我自賛だが、品質面、機能面から見て立派な装置だ。その時、愛媛の矢野さんから電話があった。この方は膜浄水器第一号のお客で、5年ほど経ったが、今も水は完璧だと喜んでいた。会話の中で目の事を心配して戴きありがたかった。時々私の営業日誌を読んでいるのだろう。 今、様々な意味で曲がり角にきていると思う。私の働いていた鉄鋼業界も、このままでは駄目になる可能性もある。競争力のある自動車鋼板は売れないし、普通鋼は世界で在庫の山だ。後は電磁鋼板しかない。90円を越す急激な円高に見まわれ、雇用の問題に直面し、高炉まで止める事態に至っている。私は、新日鉄に20年・日新製鋼に約6年半と、研究開発・事業開発に従事してきたが、その間に、次世代産業のビジネスを調べて提案してきたが改革は出来なかった。なぜ資本力・人材・技術の蓄積のある会社が突然世界の不況に見舞われて同時に崩壊するのか不思議に思う。我々は頭脳集団ではないが、研究所や大学には負けないと思う。開発案件を事業化に結び付けるのは、並の才能では出来ないからだ。一にも二にも、努力と生活感が溢れないといい発想は浮かばない。努力を重ねて危機をチャンスに変え、克服したいと思っている。 |