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◆ 11月はどんな月になるのだろう2009/11/04 (Wed)

 私は、つくば市で事務所と組立工場を構えているが、この街に来て、20年近くたつ。その間、この街は大きく変貌し、著しい発展を遂げて来た。うまく表現は出来ないが、この街は不思議な生命力を持った街だと思う。地元の有力者に聞くと不況の影響で仕事が減り、全ての業種が悪いと言いつつ、悠々自適に暮らしている。土地持ちの資産家や学生、公務員の人が多く居て、昔で言う“中流家庭”が多い街でもある。ホームレスも見られないし、田舎だが、外国籍の人も多い。近代都市ぶった幅の広い道路に、自動車が行き交って、アメリカ的雰囲気もある。直接的には、不況感さえ見えない。この街には政府系の研究所が多くある。友人も勤めているので、様々な情報を交換してお互いの力になっている。世間は不況と大騒ぎだが、私を取り巻く環境は大きく胎動し始めた。向かう先に、すごいパワーを感じるので、飛躍の予感がしている。

 工場に置いてあるコンテナハウスの内装工事を始めている。何れ、もっと世間が厳しくなれば、2カ所の事務所を工場に集約することを考えての計画だ。会社が上手く進みだしても、“手綱を締めて”宣伝も縮小し、運営、生活態度を地味に抑えて、次への準備に注力している。私は井戸水に限定して仕事を広げて来た。この延長を考えて、次は「太陽光発電」を考えている。10年前から、太陽光で浄水器を稼動させることにトライしてきたが、周辺技術の未熟さもあって、上手く進まなかった。玉造に住む発明家の人と始めたが、零細同士では頭脳があっても日常生活に追われ、これも進まなかった。

 コンテナの内装工事をはじめる際、水野からコンテナの中に太陽光発電を使ったLED照明をつけたいと言ってきた。“考えること”にはお金はかからないし、前向きな事であれば、思い切って投資をするようにしている。この案は前から考えていたので、現場がOKなら直ぐに実行に移すことにした。私は会社では実質何も出来ないので、指示は極力しないようにしているが、現場がやると言えば、簡単にゴーサインを出せる。この程度のプロセスは熟知しているし、躊躇する理由は全くなかった。水野も少し電気が分かるし、岐阜の代理店の社長も電気の専門家だ。新人の上田も電子工学を学んでいたので、素地はある。世界中がマーケットになるテーマだし、多少開発に資金が必要になるが、獲物は美味しい。友人である“スーパースター”の、中国人の工学博士がいる。私も大手企業で事業開発の仕事を担当して、多くの切れ者に会って来たが、この博士のようなパワーとスピード、聡明な頭脳を持つ人物には会ったことがない。私の会社が、膜の世界で少し異彩を放つことができるのも、この博士の力だと思っている。電話をして、太陽光発電システムを2種類、購入する準備を頼んだ。バッテリーに蓄電する方法を選んだ。2ヶ月後には装置が完成して、発電が始まると思う。この速さは我ながら凄いと思う。岐阜の代理店の若者は、今年は企業の下請けの仕事を死に物狂いでこなし、会社も黒字になったが、来年は厳しいと見越して、「将来につながる仕事に投資をしたい」と私に相談してきた。前回はホームクリーンや平膜を仕入れたが、直ぐには売れないので、太陽光発電を彼に一台送り、システムを習得することから進めることにした。岡山から建設会社の社長が見えた時にも、太陽光発電の講習会に、わざわざ新潟まで出かけると言っていた。この講習会は、受けることさえ大変らしい。政府の補助金が出ると言っても、日本の太陽光システムは高過ぎて競争力はない。昔から、このビジネスは“補助金次第”なところがあったので、疑問だった。しかし、将来は役に立つ技術だし、井戸ポンプを動かす電源として注目していた。太陽光発電は日本がトップを走っていたが、ドイツに抜かれた。しかし、隠れた真の世界一は“中国”だ。又、中国かと言いたいが、「生産量・品質・価格」誰も勝つことは出来ない。太陽光発電の鍵は“インバーター”と“蓄電”で、将来は、リチウム電池が重要になるが、リチウムは、中国と南米しかないレア・メタルだ。

 私は当社の若者に、資産ではなく“仕事”を残してやりたいと思っている。井戸ポンプの稼動とホームクリーン装置の動作に絞って、ソーラー発電システムを普及させる技術の習得もその一つだと思っている。
今月から、家庭用太陽光発電で、余った電力を各地の電力会社で買い取る法律が施行されたが、私はひねくれ者なので、この流れには乗らない。この流れに乗っても意味がないし、独自性が生まれない。電力会社が、家庭用太陽光発電システムから電力を買い上げるという仕組みは、巨大企業の下請けになることと等しい。庶民自身の投資で取り付けたシステムから吸い上げた電力を、“企業の思いのまま”で運用されるというのは、合点がいかない。補助金頼りで、本体価格は下げないので、コストは下がらない上に、太陽光発電を導入していない家庭からも料金を徴収するとなれば、不愉快に感じる人も多いだろう。本来は、太陽光発電が普及した折には、システムの導入自体が安くなって、更にみんなで発電しているから電気料金も下がる形でないと意味がない。この電力を買い上げるシステムは“欺瞞”で、それより本体を安く提供することが重要だと思う。電力会社の大手ネットワークに組み込まれると、規制も強化され、自由化は進まないと思う。大手が独占すれば、競争が起きないし、普及したとしても負担は増すばかりだ。

 当社は“井戸水の濾過”が本業だが、井戸を選んだ理由は、自由だったからだ。「水道」に参入するには、やれ資格だ、制約だ、としがらみが多過ぎる。協会に入るのにも数100万円も払わなければならない。競争がないので、技術力も乏しく、閉鎖的だ。純粋に技術だけで考えれば、井戸水を濾過できれば、水道水の濾過など簡単だ。井戸水は規制が少ない分、技術的には難しい仕事で、大量生産では各地の水質には対応出来ないので、当社がほぼ独占の状態にある。ここ10年、難しい課題に挑んで来たので、技術力も売上げも向上している。太陽光発電も、井戸水と同じように普及させようと企んでいる。通常、太陽光発電を使いたいと思うと、量販店でパネルを買えても、直ぐに取り付けて発電という訳には行かない。大手代理店を通して取り付け工事を行うと、100万円はする。補助金と買い上げのシステムに釣られて導入したはいいが、減価償却には20年近くかかる。補助金も要らない、電力買い上げシステムにも関与せずに、10年以内に償却できる価格でなければ魅力的とは言えない。当社のコンテナと、もう一台は岐阜の代理店に供与して、発電実験をさせて、採算を自身で調べたいと思う。

 業務用を考えて3〜4トンクラスの中型の装置を開発が実現してきたが、今年に入って超純水装置を2台納入した。この装置は一台1000万円もするので大きい仕事になる。6インチ膜2本を備えた大型膜装置を、湯葉の料亭に納入した。ネパールにも、寄付の形で当社の装置が出荷される。群馬の製薬会社から、井戸水の浄化に、時間10トンの装置見積り要請が来ている。この会社には超純水装置も納めているので、成約の可能性はある。フィリピンからは、時間4トンの雨水用浄化装置の見積り依頼が来ている。これらが「はまり」だすと、大化けすると思う。この他に、新日鉄と組んで大学に納める筐体も、東大だけで合計18台になった。北見、鎌倉女子、天理大等、販売が広がっている。

 ホームクリーン装置も順調で、11月に入り、埼玉と千葉の緑区の人から話があって12月に納品が決まった。当社は不況になるほど強い体質なので、全てが底堅く動いている。次に、水野にはカンボジアで使う手動式ポンプで使える膜装置をつくるように指示している。来年は海外で20%の売上げを考えているが、調子に乗って落とし穴に落ちぬよう、同時に戒めてもいる。どんなに成長しても会社を大きくする施策は避けて、貧乏ビジネスに徹して行きたい。

 滋賀から、地下水をろ過したいので、ホームクリーン装置がほしいと電話があった。遠方だし様子が掴めないので、販売を迷っていたが、先方から急に購入したいと催促された。引越しに合わせて急遽26日に納めて欲しいと言われ、水野と協議して引き請けることにした。日曜日に予備の装置を上田が改造して、徹夜で滋賀まで運び、台風で天気が崩れる中、間に合わせてくれた。滋賀を終え、渥美半島の神谷養鶏場、岡崎と連続して仕事を完了させた。30日には、滋賀のお客から入金と御礼の電話があって、火事場の仕事も終了した。28日は、午前に三郷の客が見えて純水洗車機を買いたいと会いに来られた。6年ほど前に日本初の純水洗車場を開いた時のお客で、純水の洗車が各地に広まりだしたので、当社の純水装置に興味があると言う。聞くと金銭面も厳しそうなので、装置を貸す方向でまとめようと思う。午後には下館のロータリーから装置の下見に来られた。

 先月、蛙の養殖業を営む方が、蛙の死亡率を抑えるために、基準値を超えるマンガンとマグネシウムを取りたいと言って来られた。マグネシウムはイオン交換樹脂で、マンガンは少し専門的な樹脂が必要になるが、取り除くことは出来る。しかし必ずしも死亡率に効果があるとは保証出来ないので、試作機を無償で貸してあげた。数日して、死亡率が半減したので、買いたいと言って来た。装置は売るが、生き物の命は保障出来ないので、自分の責任で使うように話した。数日して他社の軟水器を買いたいのでキャンセルしたいと言って、貸し出した装置とお酒を2本持参された。当社は、キャンセルも自由だし、私も問題が起きそうな客には販売をしない場合もある。お互い様で気にする話ではない。私は販売に際しては面談を基本にしている。不況の時こそ営業は慎重に進めないと禍根を残す。

 少し前に、60歳を越えた誠実な方が、私の元で働いていた。この方は営業がやりたかったのだろう。しかし、私の会社は営業を厳しく禁止をしていて、社風に会わなかったのか、辞めていった。仕事は、「頼まれて請ける」のが原則だと思う。こちらから出向いて勧めるものではない。買いたい人は必死に商品を探しているし、インターネットの時代、魅力的な商品であれば、自然に売れると思っている。新しい装置を開発し、苦労して組み立てた装置を訪問してまで簡単に売る気には到底なれない。

 米軍の駐屯地にも、水道水用に小型の浄水器を納入する話が進んでいる。「膜ろ過付きFW20」の開発も終えているが、私はこの機種が一番手軽で、売れ筋だと思うが、日本ではあまり売れない。中国には、膜が無いタイプの同機種が、1万台売れたと聞くが、宣伝不足のせいか成果が上がらない。昨年はショールーム、工場の拡張、まき、麻衣子、純と3名の若手を加えて、投資を拡大して来た。当初は、人件費を払えるかと不安だったが、予想以上にリーマンショックの影響があって、乗り切る為に、1500万円を越す借り入れを行った。結局、収支は1000万円の赤字を計上した。赤字の内訳が人件費と仕入れで膨らんだだけで、内容は悪くはなかった。今期はその効果が出て、半年を経過して狙い通り昨年の売上げを越え赤字を帳消しにしている。

 豆腐の製造会社に純水装置を販売したが、このご時勢で経営環境が厳しいようだ。このオーナーは朴訥な人だが、もの凄い働き者で、水野も感心するほどの経営者だ。フィルターの交換費用も請求しにくいと報告があるが、私はボランティアではないが、ボランティア精神を持たないとこの水の仕事は出来ない。可能な限り応援するように言っている。

 零細企業は、“形”にこだわらないことだと思う。「気軽で身軽で腕が立つ」をモットーに、柔軟に変化に対応する気持ちが大切になる。時代の流れに流されるのも経営だと腹を括っている。12月、1月、2月が今年の明暗を決める重要な月になる。目先より、来年を考えた準備に力を入れている。在庫覚悟で増産も辞さないし、勇気を持って対応したい。12月にはどこの会社も資金が必要な時期なので、量を仕入れることも考えている。

 カンボジアで事業を行っている方と共同でカンボジアに進出する計画を模索しているが、相手から計画を作って来ることになっている。おおよそ頭の整理も出来たし、話を聞いてみると面白い。医者のルートで水を安く販売し、そのルートで薬剤を売る計画を提案したが、相手も乗ってきている。案外、実現性が高いと思う。タイを基地にするので、タイの浄水装置の市場も調べているが、20年前の状況と変わりはない。私も20年間この仕事に携わっているので、少しは世界の情勢には知見があるが、私が販売しているホームクリーンのような装置はまだ見られない。時間数トンを一気に浄化する能力をコンパクトに納めた当社の装置は富裕層が増えだすと売れると思う。装置は簡単だが、水量1トン/時間を超す濾過装置は、家庭用浄水器レベルでは難しいし、部品の調達も大変な投資になるので、数年は先端を走れると思う。昨年はベトナムで新日鉄の関連の会社と合弁の話が進んだが、リーマンショックで頓挫した。当初から、製鉄の関係者が小規模な水の仕事をこなせる訳はないと思っていたし、大きな会社が真剣に小さな会社の生き様、ノウハウを学べば恐ろしいので、この話が流れたことは幸いだった。

 日本では、井戸水浄化の世界は、マイナーなビジネスだと思うし、この仕事を始めた当初も誰もが無関心なマーケットだった。最近は、井戸水の濾過に関心が深まってビジネスに成り始めている。アジアにはこの仕事が一番適しているし、海外は井戸水を浄化が出来ない水処理の会社は通じないと思う。しかし、この規模の装置を製造する会社は少ないと思う。アジアは中国を筆頭に成長が著しいし、繁栄と成長が加速して、“水”が注目されている。ネパールは半自動、カンボジアは手動で動く装置が必要になるだろう。11月の終わりに水野をアジアに派遣して市場調査をして今後の次期機種を決める予定でいる。マーケットが広がると単品の膜でも売れるので、少し息抜きの気持ちで、海外にも力を入れている。私の会社は私を除いて若いし、アジアは国内と見た方が正しいと思う。このままの日本人の体質ではどんどんと世界から追い越されてしまうのに、国民に危機感が乏しい。先進国での貧困率は2番目と言われてもさほど焦りは感じてはいない。国の予算を見ても税収は40兆円を割って国は借金付け、技術もインフラも劣化して脆弱でもある。アジアでは北朝鮮の次に悪い国と悪口を言われている。私は怠惰な生活が嫌いだし、物乞いもしたくはない。隣の大国、中国も数年後は危険の満ちた大国だと思っている。しかし、頑張っている。特に水は大きな問題を含んでいるが、有望なビジネスにもなっている。当社は常にチャレンジ精神で、新しい境地を開いていきたい。

 佐賀県の方から、水銀が基準の4倍近い値が出て困っていると連絡を受けた。水銀を取るにはイオン交換樹脂と、RO装置が必要になるので安くしても100万円はする。高額になるので、飲料水は小型のROお風呂は軟水器を薦めた。岡崎からは色度50の仕事だった。少し高額の見積もりを提示して工事を終えた。色度50を下げる仕事は簡単ではないが、引き受けた以上責任を持ちたい。地元の製薬会社の研究員の家庭にホームクリーン装置を納入した。メンテに同行すると、「使って直ぐ分かるくらい、水がいい」と喜んで頂いた。最初は細かいことを聞かれるので、販売を躊躇したが、使われてみると満足された。当社のホームクリーン装置は安いと絶賛してくれた。太陽光発電でも、日本では一番安い装置を販売したいと思う。11月が始まった。今月はどんな月になるのだろかとドキドキしている。体調を整えて太陽電池の会社を早期に訪れる予定で話が進んでいる。