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◆ リチウムイオン電池の導入 | 2010/03/25 (Thu) |
3月の末で、2009年の決算期を迎える。厳しい経済情勢の中だったが、頑張ったお陰で、ここ10年で最高の売り上げを記録した。働く若者も、3名増員できて、新しい年度を迎える状況にある。なぜ、今年の売り上げが順調だったのかは分からないが、新しい年度は非常に厳しくなると予想している。 当社は、地下水の利用を主眼にしているが、水の仕事は、冬場は受注が落ちる。この状態が繰り返されると、やがて来る新年度に弾みがつかない。このまま放置するということは、どんどん衰退していくことを意味する。小さな投資で、なおかつ時代にあった新しいビジネスを考えてみたが、やはり太陽光発電のビジネスしかなかった。この技術を導入できれば、小型RO膜浄水器の電源部の開発も出来るし、大きな飛躍につながると、前々から考えていた。 10年ほど前、アメリカの会社と共同で、太陽光発電で動く浄水器を開発した経験があったが、その時は、電気の知識もほとんどなく、近くにいた電気の専門家に丸投げだったし、当時は、砂ろ過による浄化、水の自販機の仕事が中心で、今から見れば、レベルの低い仕事をしていた。それからなんとか脱皮するために、ファッション性を狙った開発姿勢で、端的に言えば、格好をつけた装置の開発だった。動機は不純だったが、この仕事には将来性を感じていた。今後は、“自然エネルギーに関わる仕事”にシフトしていかないと、未来はないと思っていた。 数年前に、台東区から災害対策用浄水器を依頼され、納入したが、毎年、この話が来るようになった。私にすれば、頼まれた仕事だったが、イコールすれば、小さいマーケットが開けたことになる。この災害対策用浄水機のマーケットを伸ばそうと考えた場合、単に「入札が安いから」とか、「誰もやっていないから」という理由で売れるのではなく、実際に災害が起きた場合に、停電などで、電気がなくても使用できる浄水機をつくってこそ、市場が拡大すると考えている。 最近はエコブームに乗って、太陽光パネルの価格も下がり、バッテリーも急速に進歩するなど、周辺技術が揃ってきたことで、太陽光発電は、誰でも取り組めるビジネスに成長してきた。この技術の習得は簡単だし、ゼネコンでも簡単に参入して拡大しているし、普通のレベルなら取り組めるはずだ。例え売れなくても、環境という仕事に本格的に取り組めば、社会的な意義と使命が沸いて、社員のモチベーションが上がるという効果もある。最初は少し戸惑ったが、目に見える開発なので、面白がって取り組んでいる。この高揚した気持ちが大事だと思うので、チャレンジすることに躊躇はなかった。他人から見ると、この経済の厳しい時に、売り上げもそっちのけで、太陽光発電といったテーマに取り組んでいる姿を見たら、“キチガイ沙汰”のように思われるが、やってみると、自然の変化が身近に感じられる。晴れた日には、発電量が急速にアップして安堵したり、曇ったときは僅かしか発電できないと焦りを感じたりなど、気象の変化を体感して、生活を送るようになった。ビジネスは、常に競争だが、太陽光発電の仕事を始めてみて、一番の成果は、自然の変化として、太陽エネルギーの偉大さを身近に感じられる自分になったことが大きい。 今年の2月に水野と上田が、RCの仕事で、ネパールに浄水機の据付で訪問した際、現地での電気事情の悪さを体験して帰ってきた。その後、ネパールの大学から、太陽光発電で稼動する浄水装置の開発の依頼が来たこともあって、試作器を開発することにした。冬場の売り上げが落ちるのを穴埋めするために、太陽光発電を考えたわけだが、この技術を習得しようとしている姿勢が、ネパールの関係者から、カトマンズの大学にも伝わったことで、仕事の種が生まれてきた。 日本でも“地下水の利用”が注目されて、膜を使ったろ過技術にも焦点があたっている。水道料金が高くなるので、地下水を利用したいという本音のニーズが高まってきているようだ。当社は、大型工場や企業の規模よりもっと小さな、家庭用の井戸水の浄水器と中小零細企業向けの井戸水用プラント装置を開発・販売しているが、さらに地下水とは別に、山の湧き水を使った浄化の話も来ている。濁ったりなどの変化が激しい山の湧き水を飲料水にするには、地下水をろ過するよりさらに難しい技術がいるので、小型電源で稼動するRO膜装置が必要になる。大型膜と、RO膜を組み合わせることで湧き水を飲料水に出来れば、大きな前進になる。世界的な水不足の時代が来て、湧き水が水源として注目されている。中国が日本の湧き水の出る山を購入していることが問題になっているが、彼らの狙いは“水の確保”だ。日本でも、水不足になった際には、湧き水が重要な財産になる。山中に分け入って、水を確保するには、電源設備がないと仕事にはならない。我々は、本来、RO装置は、当社が最も得意とする分野だが、RO膜ポンプの圧力が高く、起電力が大きいためにポンプも大きくなって、移動式では使えなかった。山中に持ち込むには、リチウムイオン電池で稼動出来るRO膜装置がどうしても必要になる。そこで、素人目線の発想が暴走して、太陽光でリチウムイオン電池に充電できるシステムを、中国やアメリカまで手を伸ばし、蓄電する方法に辿りついた。リチウムイオン電池は今後、電気自動車に搭載されたりして、最先端の技術となる。開発されたのは日本で、現在はSANYOが有名だが、産業用などでは、幅広く活用されているが、個人が購入できる規模の電源としては、5Aほどの小さなリチウムイオン電池しかない。しかも10万円を超える価格だ。 この技術を、太陽光発電という切り口で、当社のビジネスの柱に育て上げれば、自慢の商材になる。当初は、冬場の売り上げをカバーするために仕方なく始めたビジネスだが、予想以上の可能性が出て、大きな勇気を与えてくれている。 私の会社は少人数で、不景気でも贅沢をしなければ、ホームクリーン装置を数台売ってメンテ作業をすれば何とかなる。しかし、守りの経営では未来がないし、給与も上げらない。会社も強くしたいし、常に注目を浴びる会社にしたいと念願している。その願いをかなえるという切り札が、太陽光発電とリチウムイオン電池の活用が鍵を握っているように思う。この製品を開発する意義を、リチウムイオン電池の大手メーカーの記述例を用いて、述べてみる。 【S電機は、リチウムイオン電池を採用することで、発動発電機をしのぐ、小型・軽量化を実現した「非常用電源装置」を開発した。地震などによる災害救急の重要性が問われる昨今において、どこにでも容易に持ち運びができる小型ポータブル電源は、電源の確保ができない場所や、停電地域での救急医療や救援活動において、重要な医療機器などの稼動を可能にすることから、市場要望が高まっている】とある。 私も、災害用の装置としてリチウムイオン電池は有望だと思い、日本の技術を調査して来たが、容量が小さ過ぎてRO膜浄水装置は動かせなかった。そこで、40Aと160Aのリチウムイオン電池を購入し、ポ−タブル電源に使うことを考えた。大手企業の製品仕様では、充電は、ACアダプターと車のシガーライターの2WAY方式しかない。太陽光発電の充電池としては使えないので、コントローラーとインバーターを組み込んで、「太陽光発電から」「AC100Vから」「バッテリーから」と、3通りの方法で充電が可能な「非常用電源装置」を開発した。しかも、災害時だけではなく、普段でも「持ち運びが出来る電源」として使用できるので、浄水装置の電源として開発に着手した。当社の目玉は“ソーラーパネルからの充電も可能なこと”だ。そして、RO膜浄水装置を加えた「浄水器搭載型・非常用電源」の開発を実現した。“浄水器として”日常使えるので、市町村の主要施設・病院・学校などへ、非常用電源として常備してもらえば、非常時の飲料水の確保、また、停電が長引いた場合でも、避難所や一般家庭で、最低限の電子機器・家電を稼動させるだけの十分な電気量を蓄えておける。小型RO浄水器・LED照明・携帯電話・様々な小型電子機器等、災害での停電時や被災時などには、高輝度LEDライトの使用も可能になる。当面は、40A、120Aの2機種に絞って小型大容量の電源装置にする。 今回のコンセプトは、「電気のない地域で使える浄水器」そして、「切り離して、電源として使える」ことで、新機種になる。晴天時には、太陽光で発電をして、雨天の場合は、蓄電池を使って安い深夜電気料金で充電する形を考えている。トータルの重さも40A/6kg・120A/18kgと、鉛に比べると3分の1くらいの軽量で、ポータブル式の移動できる装置なので、医療関係でも使えるはずだ。40Aの電源では300Wくらいの電力なら、1〜2時間は使える容量があるので、注目の製品になると思う。先般、独立型太陽光発電に精通したドイツ人の博士と話し合った際、東京で災害が起きた場合、100万人の難民が出ると心配されていて、「リチウムイオン電池をバッテリーとした太陽光発電で稼動する小型のRO膜浄水器の開発は、社会貢献に寄与する」と期待を寄せられた。 最近の日本の国内状況を見ていると、“夢が持てない国”になったとしみじみ感じてしまう。政治への不信はもちろんだが、同様に、国民自身のレベルもどんどん低下し、生きる意欲が貧弱になった気がする。私は、この閉塞感を打開するために、業務の全てを見直している。限られた資源を太陽光発電、中でもリチウムイオン電池に集中して取り組みたいと考えて、原点回帰を決意している。ここ数ヶ月間投資を集中し、調査を進めて来たが、技術をマスターするほど面白くて、最先端の仕事を身近に感じている。希望しても、日本では、小型のリチウムイオン電池しか購入できないが、中国・アメリカは、リチウムイオン電池に力を入れている。国内に拘らず、常に最高のものを探すようにし、プロの視点で調査を進めて行きたいと思う。 専門である“災害用の浄水装置”に使えると面白いし、開発を急ぎたい。中国のウイグル自治区の地方政府からも、手動式の浄水器の開発を頼まれている。月末に中国から見えるので、話が進むと期待している。 日本の一番の課題は経済だと思うが、打開策が見えない。日本の現状は全てに行き詰まっていて、先が見えないどころか、一寸先も闇の状態だ。私は地下水浄化のビジネスが本職で、先般、NHKで、地下水ビジネスは有望職だと取り上げられていたが、現実は厳しい。確実に、しかも急速に貧しくなっている環境に備えて、打開策を考えて努力を続けている。4月に、知人の大学の教授宅の家と土地を購入した。今は使う予定は考えてはいないが、もっと経済的に困難になった時、何かに使えると思うので、資金確保の為、一年間、ショールームを閉鎖することにした。 私は、半年前から日本の経済は北朝鮮についで劣悪な状態だと言ってきたが、ほとんどの人は、私の戯言だと軽く聞き流していた。しかし、報道番組を見ていると、キャスターが、アジアの中の日本の経済状態を数値で示し、北朝鮮についで、日本が最悪だと言い出した。私は常に「なぜ、日本の経済は停滞しているか」と考えているが、至極当然だと思えることは多い。今までは、「日本の技術は常にトップクラスで、世界から認められている」とされていて、国民は、この言葉を鵜呑みにしているが、実際はどうなのか、疑問だ。日本の家電は優秀だと自慢してみても、パナソニック・日立・NEC等を合わせても、韓国の三星グループシェアの半分にも満たない。急成長するインドの弱電分野でも、三星のシェアは40%と断トツで、日本全部の大手の弱電企業を合算しても、ここでもわずか5%と、散々な状態だ。数年前は、日本の環境技術が、世界最高のものだと言われてきたが、これも怪しい。日本が得意とする重電の発電所および、インフラ設備についても、インドネシアでは、中国企業に入札で完敗しており、実力低下は甚だしい。最近、アメリカのメーカー、ドイツのメーカーが、目立ちだして、韓国も躍進し出した。そんな各国は、オリンピックを見ても元気で、経済も“悪いながらも”活発に動き出している。 非常に厳しい状況になるであろう4月からの新年度を前に、ビジネスプランを根本的に見直して、仕事を日本国内に特化させ、内需を中心にしたいと考えている。昨年の半分は、東アジアを考えて手を打ったが、日本のマーケットは、ここ数年で、30%は縮小し、日本のGDPも、約500兆円と言われているが、恐らくここ3年後には350兆円に落ち込むと見ている。この数値は、大手・中堅企業では、非常に厳しい状況で、立ち行かなくなる企業が続出すると思う。私の会社は、規模は小さく微力だが、取り扱っている商材は、水ビジネスで注目されている超純水装置や、大型膜プラントが製造出来る能力を備えているので、チャンスは増えると見ている。水ビジネスは、海外に出かけなくとも仕事はある。寧ろ市場が狭くなると、小回りの利く零細企業の方が、断然有利になる。内需が減れば、規模の大きな会社は海外に進出していくこともあるだろうし、国内で生き残ることは難しくなる。人が生活する以上、水は欠かせないものなので、小回りを生かして大型の案件も手がけて、内需の仕事に備えたい。同時に、中国をはじめ、欧米の部品を購入して、日本でアッセンブルし、安く、優れた装置をアジアに輸出できる会社として、大きくシフトして行きたいと思う。 ホームクリーン装置にも、災害時には、太陽光で稼動出来る装置を組み込んだ、独立型の電源としての役割を兼ねた装置を発売する見通しが立った。先ほど述べた、リチウムイオン電池を使った、災害用のポータブル式膜浄水器も、希望者に向けて、4月からテスト販売を開始する予定だ。つくばにショールームを設け、面談の後に、ホームクリーン装置を販売し、過去最高の売り上げを記録してきたが、この実積から判断して、購入希望者には、工場より直接販売する形にする。ショールームの賃貸金を、リチウムイオン電池を使った太陽光発電のモデルルームとする資金に回し、PR設備の充実を図ると共に、新しいビジネスの柱に育てていくつもりでいる。 |