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◆ 立ち上がる勇気の源泉 | 2010/11/22 (Mon) |
28年前、広島の呉市を訪れた。私の故郷がこの地で、不思議と親近感が沸いたことを憶えている。しかし、3歳の時に被爆した後疎開したので、ここでの記憶は無いに等しい。新日鉄を辞めて、東京での勤務を条件に、日新製鋼に入社したが、初日から呉にある工場へ、勉強の為の異動を命じられた。会社のトップからスカウトされての入社なので、社員から見れば、ゴマすりのスパイのように見えたと思う。実動2ヶ月で、次の工場に移ったので、僅かの在籍しかなかったが、ここで知り合った社員たちの心根の温かさは、生涯忘れない。その後、失業し、起業して、今日に至るが、波乱の時でも不思議とこの地で得た“故郷感”が励みになっていた。人間が、「頑張れる原動力」を考えると、何かしらのバックボーンが必要になってくる。私の場合は、「他人から期待されること」だと思う。私に対しての、“何かやってくれるのではないか”という眼差しが、一種の見栄となって力になっている気がする。最近、この職場であった人に何年かぶりに電話を入れた。最初に会ったのは、私が39歳、彼は35歳の時だった。最初の会話は、「いつも、“山”にばかり行っていますが、たまには、海に遊びに行きませんか」という誘いだった。“山”というのは、毎週のようにいくゴルフのことで、多少皮肉めいた言葉だったが、彼を知る人に人柄を聞いてみると、皆揃って、様々な才能を持つ人だと絶賛していた。まず、「素潜り」では右に出るものはいないし、植物の生育を始め、雑学の達人で、当時流行したしいたけの栽培と、酵素風呂を手がけるなど、草分け的な働きを見せた。退職した今も農園を持ち、とにかく不思議な魅力を持つ人物だった。 10日に茨城県笠間市にある、光学機器の会社を訪問した。超純水装置についての問い合わせで、バングラディッシュの工場にある純水装置の代替を考えているとのことだった。時間1トンクラスの装置で、海外向けということもあって、価格では協力すると伝えておいた。 台頭が著しい中国・ベトナム・タイ・インドネシア・インド・ネパール・バングラディッシュ等、経済活動は活発だが、その国に見合った価格を提示するのが当社の考え方だ。当社が、東アジア地区に興味があるのは、“井戸水”が水源として多く利用されている点で、飲料水を考えた場合、ヒ素の問題が障害になる。“純水”をベースに考えないと、安心して飲めないので、ヒ素をとる高度な膜処理装置が必要になる。私達はRO+EDI装置の販売を考え、開発を進めている。 先般、知人の紹介で、インドネシアで40以上の鉱山を所有するオーナーと会い、当然、水の話題になった。「水」と言っても、工業用・医療用・飲料用等、用途は広い。このオーナーの言葉から、新たな水源の活用法が浮び上がった。インドネシアの鉱山は、日本のような、地中深く掘り下げる掘削法ではなく、地上から直接掘る露天掘りらしい。現場には至るところに大きな採掘穴が空き、その穴に雨水が溜まって、人工池が出来る。豪雨時には、増水し、二次災害を招く恐れもあって、危険この上ない。この水を有効活用したいので、汲み上げながらろ過することは出来ないかと尋ねられた。当社では、ダイレクト膜を使い、河川の水をろ過する装置として販売していて、この膜を使えば、解決できると思う。人工池に溜まった水を有効利用すれば、低コストで水源確保が出来る上、水流をつくれば、小型の水力発電も可能になって、クリーンエネルギーを生む“水ビジネス”に変わる。この鉱山への投資熱も高まり、道路は新設され、港では石炭の集積場が出来、急ピッチで開発が進んでいるという。ここで水を汲み上げる小型の膜を作るべく、急いで準備を始めている。アジア地区の発展の様子を聞く度に、新しい水ビジネスの形が見えてくるので、楽しい。 来年2月には、ネパールの水道局のトレーニングセンターに、EDI装置を供与する。この場所を生産拠点にする話も出ているが、実現すれば、安価な人件費で、隣国インド、バングラディッシュにも販売できると思う。 今、日本と中国は、尖閣列島問題で、関係がギクシャクしているが、残念ながら、今後、ますます対立を深め、紛争の種になると思う。中国に進出した日本の企業も、“カントリーリスク”を考えて、ベトナムやバングラディッシュ、インド等へ工場移転を加速させると思う。私達が、この大きなうねりの中で生き残る為には、技術力を高めないといけないので、高性能な膜技術と、「電気式イオン交換樹脂」に絞って開発する。ダイレクト膜の小型化も有望で、50cm×50cmの新しい製品を、1月中旬を目処に完成させる予定でいる。また、大型膜も6インチ、10インチのUF膜を使った、大規模装置の開発も急いでいる。 顧客より、このようなメールを頂いた。『先日は台風の後で足場の悪い中、塩をお運びいただき有難うございました。途中の橋は二週間前に、一年がかりでようやく新しくなり、安心して渡れるようになりましたが、途中山道はますます危なっかしくなってきました。お陰様で良いお水になったので、登ってしまうと周りの木々に癒されています。井戸を掘った当初、鉄分がひどくて困っており、私がまだ仕事していた時、何とか浄化出来ないものかとインターネットで探してプリンスビラのURLにたどり着き、会長さんにお電話したのがきっかけでした。もう、五年になります。‐中略‐今週末は天気が良さそうなので出かけて来ようと思っています。いつも不便なところをお運び頂き、有り難く感謝しております。次回は来春頃にお願いすることになると思いますが、今後ともよろしくお願い致します。』 木更津に別荘を持つ方からのお礼のメールだ。山頂までの道なき道を、25キロの塩を担ぎ配達する社員へ、感謝されたメールだった。もう5年になるのかと思うと感慨深い。数日前にも、ホームクリーン装置・第1号を設置した愛媛の方に電話をした折も、遠路はるばる来てくれたこと、井戸水が順調に飲めるようになったことへの感謝の言葉を頂いた。我ながら、こんなに喜ばれる仕事に会って本当に嬉しく思う。仕事は、「喜ばれてなんぼ」の世界だし、木更津の山の上まで塩を配達する行為は、効率と採算を考えると馬鹿げているが、しかし、水は飲む人がいて、“命”がかかってくる。当社の売りは、期待に沿うことで、私のスタッフの献身力を見て、誇りに思う。 22日、茨城県鹿島市にある産廃処理設備を訪れた。「平膜」の活用が目的だったが、汚泥を攪拌し、水分を含んだ汚泥をEM菌(有用微生物群)で脱水する設備と、電気炉で“炭”にする工程にも興味があった。経済が縮小している今、持ち込まれる汚泥の量も減り、大変な様子だった。 今後の経済情勢では、困るのは大手企業だと思う。国力はどんどん低下し、企業は、合理化で資金があり余っても、それを必要とする事業が見当たらない。我々でもこなせる小さな仕事に、大手企業が参入する状態で、このままでは、今後の企業数も大幅に減るのが現況だ。ものが売れない時代で、閉塞感夥しい。私は“開発”を本業として、小さな技術の蓄積を生かして仕事を創造しているので、不況は返ってチャンスと捉えている。日本が閉塞感で行き詰まる原因は、「予算で生活する人達が多すぎる」ことだと思う。予算は消化するもので、予算を稼ぐ仕事が生み出せないでいる。創造性のない国が喰えなくなるのは、必然だ。予算を喰う考え方を一掃し、頭を使って、生活に近い仕事を考えていかないと、予算を生む仕事の種は見つからない。 人間年をとると、欲望も小さくなり、自分を満たしてくれるのは、お金よりも、「生きがい」や「楽しみ」だと思う。今までに積み重ねた経験と勘で、こなせる範囲で仕事を見ても、山ほど案件が沸く。小資本でも、経験と知識があれば、仕事が絶えないと思っている。 インドネシアの炭鉱のオーナーの方から、塩の精製技術も相談された。インドネシアは、海に囲まれているにも関わらず、国産の塩工場がない為、輸入に頼っており、国内工場の建設を急ぎたいとのことだった。塩の精製は、私も興味のあるテーマで、海水から塩をつくる「淡水化装置」にも、やがては進出するつもりなので、膜を使って濃縮水を天日干しにする方法を考え、調査を始めている。“呉の天才”にも電話を入れた。呉は、昔から塩の産地として有名で、瀬戸内海は良い塩の宝庫だ。呉の天才が、数種類の様々な値段の瀬戸内の塩を送ってくれたので、軟水器を通して使ってみたが、肌にははっきりと、値段の差が現われる。益々、塩に興味が沸いて来た。 今月、10インチのUF膜を使用した装置を製作する。この装置を、友人と組み、水耕栽培工場に納入するが、当初は、使用水量は、1日100〜200トンの予定だったが、予算がつかないので、規模が縮小されるらしい。ここでも“予算”が障害になりだした。実積を積み上げれば、大きな仕事につながるが、皆、お金がないので、臆病になり、話が出ては消えてしまう。先が見えない時代で、約束も反故にされ、油断は出来ない。 地元のお医者さんから頼まれて、つくばの大地主宅に大型のホームクリーン装置を納入した。話の中で、軟水風呂をつくる話も出たりして、久々に話が飛躍して楽しかった。21日には、つくばの土地持ちの息子さんが尋ねて来て、ホームクリーンの購入を即決された。問い合わせが増えて、不況風は感じられないが、来年は更に厳しい予感がするので、頑張る決意でいる。 農業用のプラントも今年中に世に出したいので、資金を集めて、肥料にも力を入れる予定でいる。20年前から手がけている有機アミノ酸酵素液「プラントパワー2003」は、メーカー側の規模縮小で、今後の仕入れが不透明なので、今回は多めに仕入れる予定だ。一時は、買う目処が立たない状態だったが、現在先方と調整中で、見通しは立つと見ている。水の開発も、一応峠を越し、大方の要望に応えられると思う。 |