戻る
◆ 3.11ハイブリッドピュアウォーター2011/06/20 (Mon)

 私は、3月11日をメモリアルとして浄水器を開発して、『3.11ハイブリット・ピュア・ウォーター』と名付けた。放射性物質の除去も考えて、RO膜の小型化を進めた。“大量生産、大量消費”のものづくりから離れた製品を生み出したかった。今回の震災以降、国民の購買力はどんどん萎縮して、日本のマーケットは縮小する一方なので、世界に通用する商品開発に特化した。

 次に、太陽光発電が注目されている。2年前、工場に独立型の太陽光発電を導入し、安いシステムの開発を研究してきた。太陽光発電のコストを下げるには、パネルを如何に安く仕入れられるかにあるので、パネルの購入交渉に力を入れてきた。それには、将来量が販売できる体制を築くために浄水器を開発して、12V100Wのパネルを3枚セットで稼動する36Vのポンプを開発した。この製品をメーカーに提案して、パネルを安く買える形態が出来た。自ら小規模発電の経験を生かして、この節電の時代にあった商品開発を進めたい。この際、生活にエコスタイルを取り入れて、太陽光システムが日曜大工で造れる形に仕上げると、普及すると思って工夫を重ねてきた。政府や企業が扱うシステムは高額で、償却年数が長くなるので採算に合わない。我々が、安くパネルを輸入し、ムトウエフエーがシステムの開発を始めれば、小資本で、太陽光発電が取り扱える商材になる。安く償却期間も短く自然エネルギーが普及すれば、大きなビジネスチャンスになるので、ほとんど利益を抑えて普及に力を入れるビジネスプランを考えている。

 原発で発生する使用済み核燃料棒の数の多さに驚きを隠せない。この事故をきっかけに公になったが、今後も原発を使えば増大し続ける。この狭い国土で、生涯怯えながら生活することは避けられない。大企業が節電で経済の停滞を恐れるのなら、200兆円以上も貯め込んでいる内部留保金を自家発電に投資し、東電離れを加速させて、新しい産業を生み出して欲しい。震災特需で、大手企業の業績は急回復すると思うが、国民生活は“値上げラッシュ”で厳しくなる。ここは自家発電という考えに戻り、節電の時代にあった、小規模の400Wクラスから始めて、生活に合わせて3kWまで増やすことも出来る。既に150W、300Wのソーラーパネルと、コントローラーの開発も進めていて、今月中には届く。7月末には、あっと驚く価格でシステムを提案したい。

 放射性物質の「見えない恐怖」で、浄水器に関心を持つ人が増えた。井戸水も、地震で水脈が変化して、濁度や色度、硫化水素臭に悩む人も問い合わせが多い。“ホームクリーン装置”と名づけた当社の浄水器は、井戸ポンプの元にとり付けるので、家の中の水は全てろ過された水が使える。ホームクリーン装置は、平均で65万円前後の価格になる。聞くと高そうだが、大型の限外ろ過膜を使ってろ過し、100%軟水が出来て、菌や化学物質を除去し、臭いまでとる。メンテナンス費用も、ほとんどが材料費だけなので、トータルで考えると安い装置に仕上がっている。それでも予算が厳しい人には、今回開発した家庭用のRO装置でタンクレスの装置を薦めたい。今回開発した装置が、世間でどのように評価されるかは分からないが、海外では、砒素、ホウ素、窒素が水に混入しているので、高い性能が求められる。この装置は放射性物質でも十分対応出来るし、世界一シンプルな浄水器だと自負している。

 福島の原発事故以降、中国でも、エネルギー確保の為に、石炭の増産が決まった。チリで発生した落盤事故を踏まえて、中国でも坑道内に浄水器の設置が義務化される動きがあって、淡水化を含めて特殊な浄水器の開発の話が舞い込んで来た。坑道内では、2000人もの人が働いていてこの環境下で使えると有望な仕事になるので、現地で試運転を行うことが決まった。水質基準に合格すると、かなり話題になるので力を入れている。今回、ポンプも特別な36V仕様で特注、RO膜、専用のコントローラー、ソーラーパネルも特注した。電源も、日本の100Vから海外でも使えるように仕上げた。

 中国は、今や世界の“生産工場”から“最大の市場”へと変わってきた。レベルの低い製品から、高価な物まで幅広い生産能力を持っていて、世界最大の輸出国になった今、果たして当社が開発した浄水器が売れるのか、最大の挑戦を始めている。7月に入ってから、水野が坑内に取り付けて、浄水能力の検査を受ける。このテストに合格すれば、新しい歴史が始まると期待している。

 私は、超純水の技術では、常にトップでいたいと願っている。しかし、日本のマーケットは小さ過ぎて成長力が弱いので、アメリカで開発された時間5トンの超純水のセルも、海外で実用化を果たしたい。淡水化の技術も必要になるので、チャンスがあれば取り組む。インドと中国も見て回ったが、現地は意欲に満ちていた。今は円高だし、一様に日本の水技術を求めているので、浄水のニーズは高い。人口もさることながら、ビジネスのスケールも巨大だが、我々には、地下水の技術が蓄積されているので、十分に通用すると確信している。

 日本国内の総電気使用量の約30%が、原発から生まれている。来年には全てが休止する可能性が高く、そうなれば計算上、30%の電力が不足する。関西電力においては、発電量の55%を原発が占めているので、45%の電力しか使えないことになる。しかし、日本政府はいつも土壇場になると原則を曲げたり、例外を設けて、何とか誤魔化す手法で“先送り”をする。この計算通り原発が止ると確実に国民生活や企業活動に影響を受けるが、節電だけでは、乗り切れないだろう。東日本大震災で、東北では莫大な尊い犠牲を払ったが、終戦後も焼け野が原から複興した歴史の再現を生かして困難を乗り越えて、再建して欲しい。古い日本人の心に息づく「もったいない精神」や強靭な不屈の意思を発揮することで、自然の流れが再起の芽を育てると思う。

 原発推進派にとって、30%の電力不足は致命的な数字になるが、国民の多くは、もう原発はうんざりで、廃止して欲しいと思っている。日本は1000兆円もの債務で支えられた幻想国家だし、明日破綻してもおかしくはない国だ。日本人は、この国の現状を直視して、身の丈に合う生活に戻らないと、衰退からは逃れられないと思う。風評被害で物が売れなくなり倒産が増えた。外国からの観光客が激減し、観光業も苦しい。しかし、本当の苦難はこれから始まると思う。日本は、世界で唯一の被爆国だが、この国が放射能事故を招いた。政府や、東電が事故後の会見を聞いても、謝罪の意思が伝わってこない。原発事故は殺人罪を越える重罪で加害者として歴史に深く刻まれる。時の経過と共に、影響が拡がるだろう。

 水道水にも放射性物質が検出され、知人から浄水器の開発を頼まれた。この先の経済も悪く、開発を躊躇したが、以前から、RO水と軟水を混ぜたハイブリッド水の浄水器を考えていたのでタンクレスの装置2種類を製作した。試運転に立ち会ったが、毎分5ℓの混合精浄水が出来た。時間当たり300ℓで、150人に2ℓの飲料水が提供出来る。

 地震と津波は、今後も天災として起こりうるはずだが、時がたつと、震災の悲惨さを忘れ、何も起きなかったかのような生活に戻る。それでも、私は今までと同様に、災害に強い浄水器を作って社会に貢献したい。被災前は、電気は潤沢に供給され、余分な電気をいかに使うかが東電の仕事だった。奔放にエネルギ−を使い、高い電気料金を徴収して巨万の富を築いてきた。収益が保障された超安定株式で、日本の勝ち組達に株の配当で貢献してきた。事実上、この会社が破綻状態になり株価も暴落し、日本のお荷物企業に成り下がった。この損失は株主にとって大きい。東電エリアの節電が進むと、関西に会社の拠点を移す動きが出始めたが、関西電力も15%の節電を決め、またもお前もかの心境だ。独占企業は常に自らが困まると、ツケを国民に回す。不況と災害が重なり、国民は大企業のやり方に疑念があって、今回は節電を要請しても反発の声が高い。まずは情報を公開し、丁寧な説明が必要になる。今年の夏の暑さを考えると全てが憂鬱になる。「原発が稼動しないと経済が崩壊する」と脅されるが、日本社会は既に崩壊状態で、この声も響いては来ない。

 国民自身も、すぐに原発問題に慣れてしまって、騒ぎは表向き収まっている。汚染水の処理も、アメリカやフランスの技術と言っても、プロセスをみると、ろ過し切れるシステムではないと思う。この最悪の事態を隠すかの如く、話題は政界のゴタゴタに移って、懲りない面々が策を凝らしている。このままでは政争どころではなくなる。菅氏は最後まで“辞めない人”だし、これほど身内からも嫌われた人は珍しいが、混乱を最大限利用して、“震災復興”の二次補正予算をめぐる権力争いに留まる決意だ。この粘り腰と執念は、この分配権にあって、政界全体が国民から見放される。

 今期は、日本全体が低迷し、経営は厳しくなる。私はこの厳しさをチャンスに変えたいと思って着々と準備を始めている。社員を海外で通用する人に育てたいので、資金を確保し、経費を大幅に抑えている。7月8月の暑さがおさまる頃、インドでのビジネスの市場調査を開始するため、社員を派遣する予定だ。