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◆ 意識改革2003/09/09 (Tue)

 マスコミ等で景気の現状を株価の上昇と共に明るさが見えたと報道しているが、日常の商売から来る感触から、あまり顕著な改善は見られない。

 私のような水処理の会社で、特に超純水設備や井戸水浄化装置やUF膜を活用した新製品、来月から本格的に動き出す殺菌水の製造装置等、他社に見られない商品を扱っているので、そんなに景気の変動に影響されないが、私達の販売する商品の価格についても、厳しい値段の交渉が出てくる現状からして、厳しいビジネス環境である。


 9月の8日に、私の前に務めていた会社の後輩の方が早期退職し新規に会社を起こして、私どもが売る製品を販売するベンチャー企業の立ち上げのため、京葉銀行に融資の相談に訪れた。
 担保も、一応の退職金の資金もあり、十分に返済能力があって、何の問題もないのだが、現状を知ろうと銀行に融資ができるかどうかの相談に行った。

 銀行の回答は開業資金は非常に厳しく、担保や保証人があり、全ての条件が整っていても、現状では融資はできないという。
 そして、話が私の会社の方に及び、私の会社には運転資金を貸すことは可能だという。
 その場合、私に過去に納入した会社のリストを、つまり納入実績の資料を求められた。

 私は小泉首相がが銀行に2兆円をつぎ込んだり、中小企業に手厚い支援をしているといったりしているが、現状の意識は何も変わってはいない。

 私達は水の装置を作り販売する商売、「銀行」はお金を貸して利子を取って経営するのが商売であるはずである。
 だがなぜ、担保があり、預金があり、新しく開業していく人を支援しないで私の会社だったら貸せる、そのために納入実績を教えろというのだろうか?
 私はあきれ返ってしまった。
 納入した会社の名前を銀行に教えて何のプラスになるのか?
 自分たちの責任回避の装飾手段のために資料を求める古き体質の銀行経営がなげかわしい。

 私達は開業して15年ほどベンチャービジネスをしており、何度も何度も厳しい試練の中で育ってきたので、一向に社会体制の矛盾など何とも痛手とは感じないが、純粋に開業して生き残ろうとする人にとっては、社会の矛盾を感じたに違いない。
 こうした銀行の現状を、これから会社を作る人に教えておく方が得策なので、よい経験になっただろう。

 私達のような零細企業が今後の社会を生き抜くためには、国も社会も、親戚知人も頼りにしてはいけない。
 自らの命を自らで守ってこそ生き残れ、常に私のような開発会社のスタイルで会社運営をする方が得策なのだとその人に教えておいた。


 つくばでログハウスのプロジェクトを少し凍結しているが、その理由は土地を買うのか、借りるのかその判断がつきにくいからだ。

 つまり、建築許可が下りている土地はとても高くて買えない。
 調整区域は安いものもあるが、家が建たない。
 そのために種々の問題があって、難航している。

 私も土地を買ったり売ったりする商売は本業でないので、大手の会社の不動産部の担当者に任せていたが、なかなかうまく話が進まない。
 やむなく、私の昔から取引のある地元の不動産会社に頼んで、土地の物色を依頼した。

 大手の不動産会社は、調整区域は購入しても家が建たないので駄目だというが、地元の零細企業の不動産会社はあらゆる法律と前例を駆使し、農地を転用して喫茶店を作り、そこにログハウスの展示場を併設する案を提示してくれた。
 それで少し動き出し、200坪の土地を購入する方向でプロジェクトを一歩進めている。

 このプロジェクトが順調に進めば、ログハウスの建物の中に現在のショールームを移し、東京駅に近い所に新しく東京支店を開設しようと、少し前向きの構想を進めている。
 このプロジェクトは世の中が不況で購入する土地も安く、東京の再開発で少し離れたエリアであれば、前よりも安く事務所が借りられる利点があると考えている。

 つまり、今日を生き残るには意識改革が必要で、止まって景気の回復を待っていても何の収穫も得られないが、肉を切らして骨を切るという意識改革でビジネスの展望を考えると、意外にチャンスの芽と少し将来に希望が見えてくると思う。


 私が超純水のビジネスを手がけようと思った時、純水のイオン交換樹脂の販売会社・サイクロン日本支社長の服谷氏に相談したところ、純水製造装置は非常に専門性があって手を付けない方がいいとアドバイスを受けた。
 しかし、私は逆に「よしやってみよう」と思い、チャレンジを始めた。

 7年ほど前にEDIの装置を洗浄展で発表したが、全く世間では無関心で反応もなく、展示会は失敗した。

 展示会の前日まで一緒に超純水のプロジェクトをやろうと話していた三菱商事出身の親友も会場に来ないし、私の会社を継ぐ右腕の青年もEDIを見て、「怖い」と私に言ってきた。
 「なぜ怖いのか?」と私は尋ねると、売れなければ我々の会社は倒産するという。
 みんな表面的には私が進める仕事を「すごい」とか「進んでる」とか「売れて儲かる」とか褒めてくれるのだが、実は裏では「こんな製品が果たして売れるのか?売れるはずがない」と思っていたのだろう。


 だが私は、新製品が軌道に乗るには最低5年の月日が必要だと思っている。

 大手企業で何十年も技術開発や事業開発を手がけてきた経験からいえるのは、1年や2年で製品が軌道に乗ったという話を聞いたことがないということ。

 しかし、私の身の回りには1年や2年で商売が成功すると思っている人が多くいるので、ほとほと困ってしまう。


 約10年ほど経ち、自分で自社の製品を褒めるのはどうかと思うが、販売価格から見て、当社の超純水設備は世界的なレベルにあると自負している。

 いまや当社にとって、超純水設備や逆浸透膜の製造設備はおもちゃを作るレベルで、簡単にうちの連中は作られるようになり、現在排水処理の会社から私達の技術を盗む目的で人を派遣されているが、全部教えてあげるように指示している。

 UF膜を使った井戸水浄化設備も約6箇所ぐらいで現在評価を兼ねた設備を作って設置しているが、おおむね好評である。

 来月から殺菌水を作る装置をイギリスの会社からパーツを購入するが、ここ数年の間に素晴らしい製品として市場に投入できると確信している。


 つまり、「不可能を可能にする」、この気持ちが現状を打破する唯一の方法であり、常に意識改革を続けながら、社会の常識に挑んでいくことが零細企業の生きる道だと再確認している。