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◆ 最期(再起)と飛躍2005/10/07 (Fri)

 9月10日心臓のバイパス手術を受けた。日頃から少し疲れ気味で気にしていたが、仕事が忙しく自覚症状も少なかったので症状が進んでいた。背中の痛みがとれないので、新浦安の病院で心電図をとり波形から異常が見つかり、つくばの学園病院で精密検査を受けた。6年前に船橋の病院で心臓のカテーテル手術を受ける時に同室の患者さんがバイパス手術を受け大変さを直接目にしていたので恐怖感があった。心臓の血管に風船を使い血管を広げるカテーテルの手術は何度も経験しているので、今度は長引く覚悟で入院した。治療が始まったが、心臓の重要な動脈の箇所に石のような塊があって針の先端が進めない、他に詰まっている箇所も数箇所あると医師が告げた。そして、私には血管内部の詰まりを削る特別なドリル治療が必要になると言う。ドリルを使う特別な治療は専門のライセンスが必要で、手術はつくばのメデイカル病院しか出来ないと言う。手術を中断してメデイカル病院と緊急連絡が始まった。私は手術台で30分ほど待たされていたが不吉な予感が的中した。話し合いが済み、救急車で急遽転院する事になった。病院に着くと暗い廊下を運ばれICU(集中治療室)についた。再度検査が始まり『重要な箇所の血管が98%詰まっているし、他にも数箇所詰まっている。バイパス手術以外助からない』と医師から宣告された。経験のある方も多いと思うが心臓の手術は生命に直接関係するので、恐怖感がある。集中治療室の中で手術が終った患者が寝かされていたが、錯乱状態で、大声でわめき散らして、まさに生き地獄である。私のような零細企業の経営者は雑草そのもので、何度も経営の危機を乗り切って来たので、多少の恐怖感には慣れているが、予想を超える大手術になった。胸を開いての手術で約9時間耐えに耐えた。苦痛の時間は長い麻酔が切れて来ると新しい痛みが押し寄せる。全て時間が解決するのだが、病人の時間の流れは遅い。生命維持装置を取り付ける為にパイプが挿入されて40時間以上動けなかった。最初は2週間から1ヶ月入院の予定だったが、透析の関係で、また転院する事になった。手術後2日で抜糸し、体に差し込んだパイプを抜き、また救急車でもとの病院に再入院し集中治療室に運ばれた。透析治療は一度に体重を3キロ程減量する。マラソンの距離を走る疲労度だと言われているが、バイパス手術で弱り切った心臓に透析治療は過酷な治療である。仕事が忙しいし、社員の為に今は死ねない。仕事の使命感が驚くほど強靭な力を私に与えてくれた。2週間入院して少し歩ける状態になった。胸を手術すると背筋、腹筋の力が出ない、座る事すら難しい。歩く感覚も鈍るので少し無理をして、歩行訓練を始めた。少し歩ける状態になったので、東京で開催されていた国際福祉展と建築のデザイン展に出かけた。頭だけでも感覚を戻したかった。会場に朝9時に着き予想以上に歩けた。10時の開幕から夕方6時まで会場を歩き回った。自分ながら人間の回復力には驚いた。予定より、早く退院できて職場復帰が実現した。強運の持ち主かもしれない。目、心臓、腎臓を患っているが、厳しい社会を生き抜くためには負けられない。自立して働く意思が自分に生命力を与へてくれたと思う。それに、病院の関係者方、家族、社員等のお陰だと感謝の気持ちでいる。集中治療室の看護士のすばやい動きも目に焼き付いている。自信に満ちた医師の態度が印象に残っている。彼等は本当のプロ集団だ。看護を担当してくれた看護婦さんも優しかった。仕事とは言え何の関係もない緊急に運ばれた患者の私を懸命に救う献身的な態度に接して驚嘆した。少し元気になって病院の窓からつくば市の風景を楽しんだ。手術の時に不思議な夢を見た。筑波山が浮かんできたのだ。つくば市には20年前に企業で働いて居た時、研究所を作りに訪れた。その後、大阪、アメリカ、広島、山口、福岡、東京と転々として故郷感はなかった。現在でも新浦安とつくばを行き来しているが、筑波山を見て感動した事はなかった。突然筑波山が浮かんで、新しい生命が与えられた思いになった。私の故郷はここかも知れないと不思議な感情が湧いて来た。一時外出して筑波山までドライブを兼ねて出かけた。私は水の仕事に関係している。お金儲けも下手だし小さな零細規模の会社である。他人の資金を入れて大きくする事も知っているが、小さくても世界に通じる会社にしたいと努力してきた。好きな開発に没頭し、アメリカ、スペイン、ドイツ、中国、韓国と優れた会社や友人達と交流がある。彼らの協力で恐らく日本での水処理に関しては先端を走っていると自負している。手術で見た自信に溢れて人の命を守る強靭な医師の態度に刺激を受けた。恩返しの為に与えられた命を環境と水の仕事で社会に貢献したいと思っている。団塊の世代の方が数年後大量に退職し、自分で会社を作る人も、仲間で働ける場所を持つ生き方の人も、年金で老後を考えている人もいるだろうが、収入が少なくとも生き甲斐や使命感が湧く仕事を持つ事を進める。社会と関係が深いと使命感が力となって病魔にも対抗出来る力になるし、年齢を重ねるとお金を稼ぐより長く働ける喜びの方が楽しい。


 北茨城に大規模な牧場がある。家畜用に飲料水の浄化設備の依頼がある。大規模で難しい仕事である。環境、予算条件が厳しいので仕事を受けるべきか否かを熟慮してきた。相手がやる気になら手術と同じで受けようと思う。井戸水や沢の水の浄化は簡単ではないが、相手の熱意があれば仕事は成功する。10月4日先方の意思を確認するために訪問して話しあった。相手はやりたいと言う。冷徹に計算はするが、博打の仕事に近い。岐阜のゼネコンからダム工事の現場で湧き水を飲料水にする浄水器を頼まれた。数百万円はすると伝えると予算がないので、数十万円で作ってくれと頼みこまれた。特別にアレンジした浄水器を作り、写真を送った。その後返事がないので、忘れていたら、当社の納入実積が欲しいと連絡が来た。私は実積表を送って良いか担当者から連絡を受けたが、呆れて物が言えない。浄水器と納入実積と何の関係があるのか?浄水器を現場に付けて浄水能力が問題であって当社の信用が心配なら購入する必要はない。当社は膜製品を扱い超純水装置を大学や大企業、韓国の名だたる企業に納入しているが、夫々の関係があって商いをしている。私の事務所に来て納入実積を見たいのなら見せるが個人情報以上の情報を見せろと言う会社には装置の販売はしたくない。頼まれれば可能な限り努力をするが、売り込みの為に私の人脈を商売には利用しない。


 当社と韓国の半導体装置の製造会社と共同で多機能の浄水装置を開発している。水の自販機の性能とブロードバンドネットワークの機能を備えている。浄化は、活性炭、自動再生の大型UF膜フィルター、逆浸透膜装置、炭酸ガス等を省く脱気膜フィルター、還元水も造水できる世界で類例のないオール・イン・ワンの装置が完成した。この開発も有名な会社から相談を受けて製作している。11月17日から開崔されるつくばテクノフェア2005で発表するが、政府系の研究機関も多いので少し話題になるだろう。韓国に出張する仕事が先方の都合で延期になった。順調に体調が回復して行けそうなので、出張する準備をしている。韓国も好調な企業は中国と関係がある会社だが、心配は石油の値段だ。全般的に石油価格の上昇で苦しい企業が多い。中国の経済も石油の動向しだいだ。中国は貧富の格差が益々激しくなるし、近々問題が起きる危険性もある。注目は北朝鮮だ。近い将来変貌すると思う。韓国と、北朝鮮が関係改善し、低賃金と組織化された軍人を使い企業人に転換できれば活路がある。朝鮮半島は注目拠点になるだろう。日本は南北が融合すると安全保障等種々の問題にぶつかるが、日本は隣人外交が苦手だしこの流れは止まらない。また、韓国の若い人は朝鮮戦争を知らないし北の脅威も知らないから、北の巧みな外交ペースで融和が進むが、すでに中国や北の影響下にある。韓国と北朝鮮が経済交流を進展すると、同じ民族だし韓国の優秀な技術と北の安い労働力が組めば力がつく。北も生活が豊かになれば、戦争はしない。アメリカの動向が気になるがアメリカは石油がない地域には興味がないし、イラクで懲りている。戦争より経済、アメリカの関心は中国市場だ。日本とアメリカの関係も難しい時代になっている。関係は危ない。日本は少し距離を置いて、自国の経済力を強化して、強い影響力を持つ必要が急務である。感情的な摩擦の少ないインドやインドネシア、タイ、ベトナムといった友好諸国と関係強化を図り、国力を高める努力が求められる。国力が強くなれば、隣国との関係は修復できるし、舐められる脆弱な国になってはいけない。私は幸運にもインド、中国、韓国にビジネスルートがあるので、この関係を大切にしたいと思っている。

 
 今後は雨水の利用を考えている。降水量が多いのに地下水の水質は年々悪化している。砒素で困っているとか除鉄、除マンガン装置が欲しいと問い合わせがくるが、簡単には行かない。11月17日、18日つくば市で開催されるテクノフェア2005に8インチの大型UF膜を展示するが、ホテルや集合住宅関係、河川の水を使った家畜の飲料水レベルの浄化等に使用したい。大型浄水装置の販売開始は当社の飛躍だと思う。家庭用の地下水(井戸水)は思ったより順調だし、成果が現れている。今後、水の相談を受け付ける窓口を設け、具体的には少規模装置の販売はNPO法人に移して個人事業主の育成に寄与したいと思っている。