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◆ ものつくり講座2006/03/02 (Thu)

 2月17日から25日まで、東京大学で、超純水装置を教材にものつくりの講座を開いた。当初は地味な課題で、学生達に興味が湧くのか心配したが、好評で終れた。2005年4月に東大の教授から講座開講の是非についての相談メールが届いた。

-----Original Message-----
川手さん
 東大教養学部(1・2年生)学生に、”ものつくり”をさせることにより、工学への興味を持ってもらおうとの”講座を試行する計画があります。《中略》環境問題もあり”純水製造装置”を作らせて学習させるのではどうかとの思いです。・フィルター(RO膜)、電気分解(EDI)をセットさせ水処理設備を製作、水質測定もさせるようなことを考えているのですが如何でしょうか。
部品を組み立てることが主体になるかも知れません。《中略》・・・・・以上
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 私に依頼して来た教授とは20年以上の付き合いであった。実現するのであれば喜んで協力すると返事をしたが、直前まで、半信半疑でいた。この種の話はよくあるが、中々実現はしない。会社の規模が小さいとか、学歴がないとか、超純水装置はハイテクではないとか話題が逸れて実現しない。私も期待を裏切られて人生を送ってきたので、話し半分で了解していた。

-----Original Message-----
川手さんcc.水野さん
 明日、18日10時頃に筑波駅に着くように伺います。現物を見せて頂いた後に、進め方を教えて下さい。12月5日夕方19時以降、学生を集めて、第1回の話を小職一人で行う予定です。《中略》
御多忙な中、宜しくお願い致します。以上
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 昨年つくば市で県主催の展示会が開かれた。当社も付き合いで超純水装置を出展した。教授は予備知識のために会場に来ると言う。正直な感想だが、授業が実現するとは思わなかった。数日経ってまた、メールを戴いた。 

-----Original Message-----
水野さん
 御多忙な中、色々お願いして申し訳ございません。
1.「超純水装置のフロー図」・・・水道水、タンク、活性炭、RO膜、EDI、UF膜、
2.純水各装置の簡単な仕様
3.装置の写真(可能な範囲)
4.RHプリンスビラのカタログ又は、パンフレットを、簡単に送っていただくと此方で整理します。
宜しくお願い致します。《中略》 以上
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 また、2005年12月にメールを戴いた。

-----Original Message-----
川手さんcc.水野さん
 年末でお忙しいことと存じます。さて、来年2月16日午後から22日までの”膜活用による超純水装置に挑戦しよう”の受講学生が、純水装置を見学したいとのこと。当方が水を向けたのですが・・・日程的には、2月2日から試験に入るので、1月に伺いたいのですが、如何でしょうか。電話でも頂けると助かります。以上
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 と連絡があったが、私はまだ疑っていた。しかし、双方で準備は進んでいた。その後スケジュールの調整が進んで2月3日に受講生が、予備知識を兼ねて当社を訪れた。昼間から夜遅くまで、懇談したが、好奇心は旺盛だった。見学会が終ってまた、メールが届いた。

-----Original Message-----
超純水グループへ
 2月3日午後から夕方まで、《中略》筑波の見学をしました。RHプリンスビラの川手会長さんの現場感覚と技術に対する熱き想いを十分に聞き、また、水野社長の技術的な説明もありました。小企業ですが、多くの製品開発品を見て、水処理技術の重要性を再認識したと思います。17日からは、今回製作する装置の概要説明と作業説明、配布した教科書への質疑(十分には答えられないかもしれないが)の後に、グループ分けして、早速製作に入る予定です。尚、2年生の松田さんから、授業の一環として”膜技術について調査”したので、パワーポイントで30分位の説明を申し出があります。この件は、皆さんに図って決めますが、是非、お願いしようと思っています。以上
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 話が具体的に進んで来たが、準備の段取りが見えて来ない。大型装置をつくり始めたが、講座を開く場所の広さとものつくりの内容の把握に苦慮する事になる。見学会が終ってお礼のメールが来た。

-----Original Message-----
川手さん・水野さん、御多忙な中、送迎及び夕食までご馳走になりありがとうございました。今後とも、よそしくお願いいたします。
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 零細企業の姿を見て期待を裏切ってのではないかと思ったが生の姿を見てもらった。見学を終えた学生から感謝と感想を書いた葉書やメールを戴いた。

-----Original Message-----
川手様
突然のメール、失礼します。昨日貴社の見学をさせて頂いた東京大学の寺川と申します。昨日はお忙しい中わざわざ私共のために時間を割いていただき、どうもありがとうございました。昨日のお話の中には、今まで私が余り耳にしなかった分野の話も多く含まれていたため、理解が追いつかなかった部分もありましたが、非常に良い刺激となりました。17日以降の駒場での授業におきましても、どうか宜しくお願いいたします。
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 駒場の東大の現場を事前の下見に出かけた。6階の新しい教室だった。悪い予想が、適中した。エレベーターが小さい。大型の超純水装置を製作してきたが、入口が狭くて搬入できない。水野と相談して慌てて小型の超純水装置を徹夜で、作り始めた。

 私は独立前には大企業で、研究開発や新規事業を担当していた。アメリカとは半導体、ドイツでは箔の圧延機の開発。日本に導入し、異業種の企業と組んで仕事をしてきた。最近は、中国、韓国と仕事の幅を広げている。企業の将来性の有無は、国内だけの仕事だけでは生き残る事は厳しくなった。国際化でコスト競争は厳しくなり、品質は最低の条件で、コストで負けると勝負にならない。日本の企業はコスト競争力を高めるために、外国の会社と関係を持ち、景気が良いと答えている企業は共通して中国等に生産工場を持っている。安い労働力を使い、生産した商品を国内で、販売して莫大な利益をあげている。海外に製造基盤のない企業は厳しい。日本の中小企業で働く労働者は日本が、景気が良くなっても逆に格差が広がり仕事も先細りして厳しくなる。学生達も厳しい社会を肌で感じていて、良く社会の実情を理解していた。地味なものつくりの授業だが、熱心に取り組んでいた。EDI装置を分解して復元する作業を始めたが、私も初めてEDI装置の中身を見た。多分、日本でEDI装置の中をバラシテ見た経験者は少ない。膜装置の自動化の電源装置も組み立てた。RO装置も分解して組み立て直した。全般的には予想以上に盛り上がり、時間が足りないほど盛況だった。

 日本の再生は優れた技術を生み出す以外にないが、残念ながら身近な生活の中で、ものつくりの機会にめぐり合えない。アメリカ型の経済が、日本に導入されて、株を中心とした成金主義が台頭して、社会や経済の仕組みが、作りかえられて、関心が、ものつくりから金融に移り、時価総額で会社の価値が決まり、株の交換で会社を売買出来る経済界が社会の常識を変えてしまった。市場経済の結果、一部の大企業に資本が集まり大きな格差が生れ、個人の能力や才能は無力になり、社会を動かす巨額の資金が世界中を支配し、個人の能力では、制御できなくなっている。現在の市場経済を導入する政権を選んだ責任は国民にあるので、仕方がない事だが、市場経済優先の政策は日本人には馴染まない。伝統のものつくりは壊滅し、今後も、市場経済政策で大手企業は、数字の上では利益を得られるが、格差が拡大して、益々日本のものつくりの基盤が崩れて共倒れする。市場経済で儲かる企業が増えるのであれば、もっと若者に投資をすべきだと思う。オリンピックを見て、世界の壁は大きいと思った。日本の国力は確実に弱体化している。事前の期待は大きかったが、空回りして、竹槍で玉砕する惨めな日本を見た。日本のレベルは数十年、遅れている。唯一、荒川選手が金メダルを獲得した。西武グループから久々にスターが誕生した。西武グループは刑事事件を起こす前は冬季オリンピックに投資をして、若者を育てあげた。雪印も事件を起こす前はスキーの選手を育ててきた。企業が問題を起こし、衰退するとスポーツ競技から徹退し、弱体化する。荒川選手の快挙は彼女を送りだした西武グループも称えるべきだ。社会は企業が問題を起こすと袋叩きだが、選手を育てたあげた会社の功績も賞賛すべきだ。金メダルを獲った瞬間、プリンスホテルの社員が総立ちして、久々に誇りに満ちた笑顔を見た。オリンピックは国力の象徴であり、企業戦争でもある。勝つと国威が高揚するし、国際的にも認知度が挙がる。企業が利益の追求のみで終らないで、若者に投資をして欲しい。私も微力ながら今回、東大のものつくりの講座を引き受けたが、心の底には若い学生が、日本のものつくりの良さを感じて欲しいと思って引き受けた。技術を指導する水野はアメリカで育った若者であった。彼は0から学んで一流の技術者に成長しつつある。この講座は彼にとっても大きな収穫であった。企業の責任は人材を育てることだが、企業が人材を育てるために努力を放棄すれば、日本の将来はない。世界2位の経済大国、経済力がある間にスポーツくらい金を掛けて思い切った投資をすべきだ。勝負事は勝たないと話にならないし、日本では、メダルを獲得しても、後の生活の保証がない事も問題だ。物作りで生計を営むシステムも崩壊している。若い人に希望が持てない国それでも、経済大国だから計算高い若者しか育たない。ものつくりの授業が終ってメールを戴いた。

-----Original Message-----
川手さん、水野さん、約1週間本当にお世話になりました。1から全て自分の手で作り上げていくお二人はすごいなあと思いました。水は大事なものであることはもちろんよくわかりましたが、教えられたことを理解してマスターすることはできるかもしれないけど新しいものをつくったり思いついたりしたことなんてない自分にとっては、色んなものを参考にしながら自分で新しいモノを1からつくりあげるっていうことに感銘をうけました。とてもいい体験ができました。ありがとうございました。《中略》親にもこの水を飲んでもらいたいです。今度の見学でまた水野さんにお世話になりますが、またどうぞよろしくお願いします。最後にみんなで撮った写真を添付しておきます。  

-----Original Message-----
川手さん、水野さん
こんばんは。全学ゼミでお世話になった國分です。普通では高くていじることもできないような機械に触れる機会を作ってくださり有難うございます。実際に純水装置を組み立てていくことで、本で読むよりもずっと
水をきれいにする技術に興味がわいてきました。純水装置に限らず色々なお話も聞くことができ、とても楽しかったです。有難うございました。

-----Original Message-----
川手様
今回は純水の授業のために、わざわざ何度も筑波から足を運んで頂き、どうもありがとうございました。今回の授業を通して、今まで余り切実に感じたことのなかった水について意識が強まったように思います。街中を歩いていて、水を使ったモニュメントを見たりすると、これは裏で何を使ってきれいにしているのだろかとかつい考えてしまうようになりました。また、授業には直接関係ないお話の中にも、色々と考えされられることがあり、非常に良い話を聞けたと嬉しく思っております。本当に今回はどうもありがとうございました。これからも宜しくお願いいたします。
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 メールを戴いて嬉しい。小さい事だが、何か役に立つ手ごたえがあったのだろう。彼らは優秀な学生だから日本再生のシナリオを考える指導者に育って欲しいと思う。貧弱な底上げの社会では寂しい。バレなければ何でもありの風潮。蓋を開ければ日本全体に中身がない。改めて欲しいと思う。堀江氏の逮捕劇で、時価総額8000億円の資産が吹き飛んだ。人物を評価する尺度がないので、金と学歴にしか評価の基準がないのが、問題である。足元を固めたい。耐震強度偽装、官製談合、天下事件等世間を賑わせているが、小さい問題で、根本的な問題ではない。これ等はコソ泥程度のもので、予算が少なくなると誤魔化しも出来なくなる。この国はもっと、根本的な改革を行わないと取り返しがつかない状態である。今回、ものつくり講座を開いたが、教える側にも強い刺激が与えられた。また、機会があれば社会貢献が出来る気構えで成長したいと願っている。